とある”災厄”の興り - 6/6

 男が――ヴラシスが生前持っていた記憶はここまでだ。彼の憎悪、怒り、悲哀、嫌悪、果ては絶望を喰らっては膨らませ、それらを糧とし身体を拠り所にしていた災厄は、こうして生あるものの世界へ顕現する。
 深く濃い紫の長い髪、彼と同じ銀に仄かな赤い光を差した瞳。黒い衣服を身に纏い、殆どあらゆるを喰らってやった元依り代を見下ろし、笑い声を響かせていた。

 そうして見上げた空は。重く暗い雲が覆っていて、光は見えなかった。

送信中です

×

※コメントは最大500文字、10回まで送信できます

送信中です送信しました!